【専門医が解説】第2回 糖尿病の重症度をチェックするための二つの指標;HbA1cと合併症

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このページでは、糖尿病専門医が「糖尿病とはどんな病気か?」について、全10回にわたってわかりやすく教えます。

細かいところは省いて、とにかく大まかなイメージをつかんでいただくことを目的としています。

今回は前回に続いて第2回です。

糖尿病患者さんからよく受ける質問の一つに、「先生、私の糖尿病はどのくらいひどい(重症)ですか?」というものがあります。

たしかに一言で糖尿病といってもその状態は様々ですので、ご自分の現在の状態をチェックすることはとても大事なことです。

そこで今回は糖尿病がどのくらい重症かをチェックするための目安についてお話しします。

糖尿病の重症度をチェックするための二つの指標;HbA1cと合併症

じつは、糖尿病がどのくらいひどいかを調べる目安は2つあります。

たとえばあなたの家計がどんな状態かを調べる場合、月々のお金の出入り(今月は赤字か?黒字か?)を調べるだけでは不十分で、その他に貯金・借金の総額も調べる必要がありますよね?

仮に今月は10万円の黒字だったとしても、借金が何百万円もあれば家計は良い状態とは言えません。

一方、仮に今月は10万円の赤字だったとしても、貯金が1億円あれば当面はそんなに心配しなくても大丈夫かもしれません。

糖尿病の状態についてもこれと同じで、「毎月の状態をみる目安」と、「長い年月の積み重ねの結果をみる目安」という2つをチェックする必要があります。

毎月の状態、つまり1カ月程度の短期間の目安としては主にHbA1c(ヘモグロビンエーワンシーと読みます)という値を使います。

HbA1cは血液検査で調べることができ、1-2カ月間の糖尿病の状態がどうだったかをチェックできます。

詳しくは別の記事で説明しますが、ざっくりと覚えるなら6.0%より低ければ花マル、6.0-7.0%なら合格点、7.0-8.0%なら黄色信号、8.0%を超えていたら赤信号です。

6、7、8%で覚えてください。

一方、長い年月の積み重ねの結果の指標(家計なら貯金・借金の総額に相当)としては、「合併症」がどのくらい進んでいるかが目安となります。

合併症についてくわしくは別のページで説明しますが、大まかにいうと合併症とは全身のさまざまな臓器が受けたダメージの合計のことをあらわします。

この臓器のダメージが積み重なると、最終的には生活がとても不便になる、あるいは、命を落としてしまうことにもつながります。

HbA1cと合併症の関係は?

HbA1cは1カ月程度の短期間の指標(家計なら毎月の収支に相当)、合併症は糖尿病になってから現在にいたるまでという長期間の合計の指標(借金の総額)ですが、HbA1cと合併症は互いに関連しています。

たとえば家計の場合にも、毎月赤字が続けば借金が増えてゆきます。

つまり、HbA1cが高い状態がずっと続くと合併症がどんどん進行してしまいます。

また、仮に少し借金ができてしまったとしても(=合併症が出始めてしまっても)その後の家計が長期間黒字ならば(=HbA1cがよい状態が続けば)借金は減ってゆきます(=合併症が消えて元に戻ります)。

ここで注意点がひとつあります。

それは、「合併症がある程度悪化してしまうと、その後はいくらHbA1cがよくなっても合併症が悪化し続けてしまう」ということです。

たとえば借金が多いと利息を返すことすら厳しくなり借金はどんどん増えてしまう、ということがありますが、まさにこのような状態です。

最近は合併症を元に戻す治療もできるようになってきてはいますが、それでも進んでしまった合併症は現状維持するのが精一杯で、完全に元通りとはいかないのが現状です。

糖尿病の治療はなるべく早い時期から始めて、合併症が出るのを予防することが大事、というのはまさにこのためです。

HbA1cだけでなく合併症の状態も覚えておこう!

引っ越しなどのため他の病院やクリニックから紹介されてきた患者さんに「最近のHbA1cはどのくらいでしたか?」と尋ねると、ほとんどの方が数値をちゃんと把握しています。

いっぽう、「合併症はどの程度進んでいるといわれていますか?」と尋ねると把握している方は少ない印象です。

HbA1cは毎月必ずチェックするのに対して合併症の状況は年に数回しかチェックしませんので説明を受ける機会も少ないかもしれません。

しかし、糖尿病を治療する目的は合併症の悪化を防ぐことですので、現在自分の合併症がどのくらい進んでいるのかは必ず把握しておきましょう。

以上、今回は糖尿病の短期的な目安であるHbA1cと長期的な目安である合併症について説明しました。

次回は「糖尿病の合併症とは」について説明します。

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この記事を書いた人
西村 明洋

総合内科専門医・糖尿病専門医・内分泌代謝科専門医・医学博士
まくはりコーラス内科 院長
2006年より東京都港区の虎の門病院に約15年間勤務し、糖尿病、脂質異常症(高コレステロール血症)、甲状腺疾患、骨粗しょう症、高血圧症などの診療に従事(外来約400人/月、入院常時10-30人)。
患者さんに寄り添いながらベストな治療を見つけてゆくスタンスで日々精進しています。

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