【専門医が解説】第1回 糖尿病ってどんな病気?糖尿病の6つの特徴

糖尿病 糖尿病とは 最重要知識
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新米患者さん
新米患者さん

健診で糖尿病と言われたのでネットで調べてみたけど、専門用語ばかりでよくわかりません。

専門医
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はじめて糖尿病について学ぶ人のために、わかりやすく解説しますね。

皆さん、こんにちは。

このページを読んでいる方には、はじめて糖尿病と言われて不安になっている方も多いかもしれません。

たしかに色々と心配かもしれませんが、正しい知識をしっかりと学べばそれだけで不安は軽減します。

そこで、このページでは糖尿病専門医が「糖尿病とはどんな病気か?」について、全10回にわたってわかりやすく教えます。

細かいところは省いて、とにかく大まかなイメージをつかんでいただくことを目的としています。

今回は糖尿病がどんな病気かについて、特に皆さんが普段イメージする病気との違いを中心に説明します。

病気のしくみ(メカニズム)の理解は後回しでOK

糖尿病について調べると、たいていは最初に糖尿病のしくみ(メカニズム)について詳しい解説がされています。

「血液中のブドウ糖が…」とか、「膵臓から分泌されるインスリンが相対的に不足して…」とか、「肥満になるとインスリン抵抗性が…」とか。

正直なところ「読んでもチンプンカンプン」という人が多いのではないでしょうか?

これは別に書いている人の説明が下手だからでも、皆さんの理解力が悪いからでもありません。

そもそも病気のメカニズムを理解するのはけっこう難しいことなのです。

研究者や医療従事者になる人はこれらについて順を追って勉強する必要がありますが、患者さんはそこまでする必要はありません。

例えるなら、自動車教習所でいきなりエンジンやサスペンションのメカニズムについて解説されるようなものです。

メカニズムを知るのは自動車を開発する人や整備士になる人にとっては重要でも、運転する人にはあまり重要ではありません。

むしろ、「右足がアクセル、左足がブレーキ」ということのほうが大切です。

そこで、ここではあえて難しい糖尿病のメカニズムを説明せずに「糖尿病とは?」を解説したいと思います。

メカニズムについては今後別のページで解説しますので、まずは第10回までの解説をざっと読んでみて、糖尿病について何となくでも理解できた後にチェックしてみてください。

特徴その1 糖尿病は症状がなくても悪化する

皆さんが想像する病気というと風邪(かぜ)や胃腸炎などがあると思いますが、糖尿病はこれらの病気とは全くちがいます。

風邪や胃腸炎では急に熱や咳(せき)、おなかの痛みなどがおこって普段通りの生活ができなくなりますが、大抵は治療をすれば元通りの状態に戻ります。

一方、糖尿病ではほとんどの場合症状がありません。

しかし、症状がなくても知らぬ間に病気は悪化し、体調不良に気づくのは病気がかなり悪化してからの場合が多いのです。

なお、糖尿病が短期間でひどくなると「のどが渇く」、「尿の量や回数が増える」などの症状が出ることがありますが、このような症状は治療をすればすぐに改善し、その後も続くことは少ないです。

特徴その2 糖尿病は、悪化すると元の状態に戻すのが難しい

症状がなくても悪化してしまう糖尿病ですが、いちど悪化してしまうと元の状態に戻すのが難しいのも特徴の一つです。

たとえば糖尿病が悪化すると視力が落ちたり目が見えなくなったりしてしまうことがありますが、こうなってから治療をしても元通りの視力に戻すことは難しいのです。

最近は治療の進歩により以前に比べれば元に戻すことも可能となりつつありますが、それでもある程度悪化すると完全に元通りには戻りません。

したがって、できるだけ早い段階で病気を見つけ、悪化を防ぐことが治療の基本となるのです。

特徴その3 適切な治療を続ければ、糖尿病がない人と変わらない人生を送ることができる

特徴その1、2を読んで怖くなってしまったかもしれません。

しかし、きちんと治療を続ければこれらを防ぎ、糖尿病がない人と同じくらい長生きすることも、人生を楽しむこともできます。

例えば近視の人は眼鏡をかけなければ生活はとても不便ですが、眼鏡をかければ近視のない人と変わらない生活を送ることができます。

糖尿病についても、治療をつづければ糖尿病がない人とほぼ変わらない生活を送ることができるのです。

特徴その4 定期受診が必要

特徴その1でもお話しした通り、糖尿病は症状がなくても悪化してしまうことがあります。

つまり、いちど治療がうまくいったとしても知らない間にまた悪くなってしまっていることがあります。

したがって、定期的な検査で悪くなっていないかを確認する必要があります。

実はこれがとても重要なポイントで、糖尿病が悪化してしまった人の中には途中で通院を止めてしまった人がけっこういます。

いちど治療をして良い状態に戻り、「糖尿病が治った」と思って治療をやめたらその後知らない間に悪化し、気づいたときにはかなり進んでいた、ということにならないよう、定期的にチェックを受けましょう。

繰り返しになりますが、「症状がない」ということは「検査をしてみないと良いか悪いかわからない」、ということです。

特徴その5 糖尿病の原因は不摂生だけではない

一般に糖尿病というと、食べすぎ、飲みすぎ、運動不足などの悪い生活習慣(不摂生)が原因と思われています。

たしかに不摂生が原因で糖尿病になったり、糖尿病が悪化したりすることはよくあります。

しかし、糖尿病の原因は不摂生だけではありません。

親が糖尿病だった場合の遺伝や、他の病気によって引き起こされたもの、原因不明のものまで、その原因はさまざまです。

特に日本人は欧米人と比べると遺伝的に糖尿病になりやすいことが知られており、太っていない糖尿病患者さんもたくさんいます。

逆に言うと、不摂生を改善すればすべての患者さんで糖尿病が必ず良くなる、というわけでもないのです。

私は専門医として多くの糖尿病患者さんを担当してきましたが、入院して病院で決められた食事のみを食べ、しっかりと運動をしていても糖尿病が良くならない人もたくさんいました。

また、まるで試合前のプロボクサーのような過酷な食事制限や運動を行っていても糖尿病が良くならない患者さんもいらっしゃいました。

このような患者さんでは飲み薬やインスリン注射などのお薬によるサポートが必要となります。

ここでお薬を始めるタイミングが遅れてしまうと後々糖尿病がこじれてしまい、元の状態に戻すことができなくなってしまうことがあります。

もし数カ月経っても検査結果が良くならない場合、お薬を使うことを検討してもよいでしょう。

特徴その6 糖尿病は、患者さん自身が治療に参加する必要がある

たとえば手術が必要な病気では、患者さん自身にできることは限られています。

いわゆる「まな板の鯉」という状態で、じっと手術が終わるのを待つしかありません。

もし医師である私が手術を受けるとしても、やはり手術をする先生にすべてお任せするしかありません。

しかし、糖尿病では食事や運動など日々の生活が治療に密接に関係します。

患者さんが正しい知識にもとづいて日々の生活を送ってくれなければ、糖尿病は良くなりません。

医師が薬を処方した場合でも、患者さんが毎日忘れずに薬を飲まなければ効果はありません。

つまり、糖尿病の治療は「医師にすべてお任せ」ではダメで、患者さん自身に治療に参加してもらうことが必要なのです。

だからこそ私はこのサイトを通して患者さんがより効率よく学べるような手助けをし、少しでも多くの患者さんに治療に参加してもらいたいと考えています。

おわりに

以上、糖尿病の6つの特徴について他の病気との違いを中心に説明しました。

大まかなイメージはつかめましたでしょうか?

次回は、「糖尿病の重症度をチェックするための二つの指標;HbA1cと合併症」について解説します。

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この記事を書いた人
西村 明洋

総合内科専門医・糖尿病専門医・内分泌代謝科専門医・医学博士
まくはりコーラス内科 院長
2006年より東京都港区の虎の門病院に約15年間勤務し、糖尿病、脂質異常症(高コレステロール血症)、甲状腺疾患、骨粗しょう症、高血圧症などの診療に従事(外来約400人/月、入院常時10-30人)。
患者さんに寄り添いながらベストな治療を見つけてゆくスタンスで日々精進しています。

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