【専門医が解説】第3回 糖尿病の合併症とは

糖尿病 合併症 負債 最重要知識

このページでは、糖尿病専門医が「糖尿病とはどんな病気か?」について、全10回にわたってわかりやすく教えます。

細かいところは省いて、とにかく大まかなイメージをつかんでいただくことを目的としています。

前回は糖尿病がどのくらいひどいかを調べる目安として「HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)」と「合併症」という二つの目安があり、合併症は長い年月の積み重ねの結果の指標(家計なら貯金・借金の総額に相当)であることを学びました。

今回は合併症とはどんなものかについて解説します。

初期はまったく症状がない

「痛くもかゆくもないなら、放っておけば良いじゃん」と思われるかもしれませんが、じつはココが糖尿病の怖いところです。

たとえ症状はなくても、あなたが知らない間に体へのダメージは確実に積み重なってゆきます。

そして、次のような特徴があるため症状がなくても放ってはおけないのです。

悪化すると元に戻すのが難しい(初期なら戻ることあり)

糖尿病の合併症は悪化すると元に戻すのが難しい point of no return
糖尿病の合併症が悪化すると元に戻すのは難しい

もし合併症の初期は症状がなかったとしても、悪化して症状がでた時点で治療をすれば元通りに戻るのならば問題はありません。

しかし、糖尿病の合併症はある程度悪化すると元に戻すのが難しく、場合によっては治療を行ってもどんどん悪化してしまう場合もあります。

したがって、症状がない早期から合併症を見つけ(早期発見)、もし合併症が起こり始めていたらすぐに治療を強化すること(早期治療)が重要なのです。

HbA1cが高い人、糖尿病歴が長い人で起こりやすい

前回お話しした通り、HbA1cは1カ月程度の短期間の指標(家計なら毎月の収支に相当)、合併症は糖尿病になってから現在にいたるまでという長期間の合計の指標(借金の総額)でした。

したがって、毎月の赤字額が多いほうが借金の総額は増えやすいのと同様、HbA1cが高いほうが合併症は起こりやすいのです。

また、HbA1cがごくわずかに高い場合でも、それが長期間続けば(=糖尿病歴が長ければ)合併症は起こりやすい、というのも納得できるかと思います。

他にもこんな人は合併症が悪化しやすい

それだけではなく、合併症は以下のような人でさらに悪化しやすいことが知られています。

  1. 血圧が高い人
  2. コレステロール、中性脂肪などが高い人
  3. タバコを吸う人

詳しいメカニズム(仕組み)の解説は省略しますが、これらのいずれかに当てはまる場合、合併症が悪化しやすいことは疑いようのない事実です。

以前患者さんから「糖尿病で通院しているのになぜ毎回血圧やコレステロール値をチェックするの?」と質問されたことがありますが、これらは合併症を悪化させる原因となるためチェックしているワケです。

また、「タバコは甘くないから吸っても問題ないでしょ?」とおっしゃった患者さんに禁煙をお勧めするのも、タバコは糖尿病の合併症を悪化させるからです(もちろん、タバコのデメリットは糖尿病合併症以外にもたくさんありますが)。

つまり、糖尿病は”糖だけ”をみていては不十分で、いろいろなパラメータに気を配る必要があるのです。

合併症のタイプは大きく分けて2種類

糖尿病の合併症をざっくりと2つに分けると、以下の2種類に分かれます。

  1. 三大合併症(細小血管(さいしょうけっかん)合併症とも言う); 糖尿病患者さんだけに起こる
  2. 大血管症(動脈硬化性疾患(どうみゃくこうかせいしっかん)とも言う); 糖尿病ではない人にも起こるが、糖尿病患者さんではより起こりやすい

なんだか難しいコトバがいくつか出てきましたが、無理に覚えなくてOKです。

たまに医療従事者が書いた本やブログでこのような言葉がサラッと使われている場合がありますので、それを読んだときに「???」とならないように一応書いておきます。

それぞれの詳しい内容は別の記事で解説しますが、大まかな特徴は以下のとおりです。

1. 三大合併症(細小血管合併症)

三大合併症には3つの合併症が含まれ、比較的細くて小さい血管がダメージを受けることから細小血管合併症とも呼ばれます。

三大合併症(細小血管合併症)
・糖尿病がない患者さんに起こることはなく、糖尿病患者さんだけに起こる
・神経障害(しんけいしょうがい)、網膜(もうまく)症、腎症(じんしょう)の3つ
・神経障害→手先、足先の神経や自律神経(じりつしんけい)のトラブル
・網膜症→目のトラブル
・腎症→腎臓(じんぞう)のトラブル

 んけい、んぞうで、「しめじ」と覚えます
糖尿病の細小血管合併症(三大合併症)は「しめじ」
糖尿病の細小血管合併症(三大合併症)は「しめじ」

詳しくは次回以降説明しますが、現在日本では腎臓がほとんど働かなくなってしまった患者さんの原因の1位は糖尿病性腎症です。

また、失明(目が見えなくなること)の原因の3位は糖尿病網膜症ですが、若い人に限定すると失明の原因の1位は糖尿病網膜症です。

2. 大血管症(動脈硬化性疾患)

細小血管合併症と比べるとより太い血管がダメージを受けるため、大血管症と呼ばれます。

「動脈硬化」が原因であることから、動脈硬化性疾患とも呼ばれます。

こちらも主に3つの合併症があります。

大血管症(動脈硬化性疾患)
・糖尿病がない人にも起こるが、糖尿病患者さんではより起こりやすい
・末梢動脈疾患(まっしょうどうみゃくしっかん)→足の血管のトラブル
・脳梗塞(のうこうそく)→脳のトラブル
・心筋梗塞(しんきんこうそく)や狭心症(きょうしんしょう)→心臓のトラブル

そ、うこうそく、ょうしんしょうで「えのき」と覚えます
動脈硬化性疾患(糖尿病の大血管症)は「えのき」
動脈硬化性疾患(糖尿病の大血管症)は「えのき」

こちらも詳しくは次回以降説明しますが、心筋梗塞、狭心症を含む心疾患は日本人の死因の2位、脳梗塞を含む脳血管疾患は死因の3位です。

さらに、脳梗塞は寝たきりの原因の1位でもあります。

なにより予防が大事!!

合併症の話を聞いて怖くなってしまった方もいるかもしれませんが、しっかりと検査・治療を行えば心配はいりません。

合併症が起こらなければ、たとえ糖尿病があっても普通の人とほとんど変わりはないのですから。

まずは何より、合併症を起こさないこと、つまり予防することが大事です。

合併症を予防するためにすべきことや、もし合併症が起きてしまったときの治療方法については、次回「糖尿病合併症の予防と治療」で説明します。

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この記事を書いた人
西村 明洋

総合内科専門医・糖尿病専門医・内分泌代謝科専門医・医学博士
まくはりコーラス内科 院長
2006年より東京都港区の虎の門病院に約15年間勤務し、糖尿病、脂質異常症(高コレステロール血症)、甲状腺疾患、骨粗しょう症、高血圧症などの診療に従事(外来約400人/月、入院常時10-30人)。
患者さんに寄り添いながらベストな治療を見つけてゆくスタンスで日々精進しています。

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